特集
腸内だけじゃない! 今、注目の「口内フローラ」

腸の中でたくさんの細菌がひしめき合っている様子は「腸内フローラ」と呼ばれますが、同様に口の中にも「口内フローラ」が存在します。口内フローラとはどんなものなのか、森永乳業の研究員の方に話を伺ってきました!

森永乳業株式会社
研究本部 素材応用研究所
機能素材開発グループ

中野 学 さん

大学でタンパク質の基礎研究に取り組んだ後、「一生を通じて元気に食べることを支える食品を開発したい」と森永乳業に入社。ラクトフェリンとラクトパーオキシダーゼを組み合わせた機能性素材「オーラバリア」の研究を行い、口内フローラを改善する機能性食品の開発を行っている。最近の研究課題は「働き盛り世代の予防歯科」。

森永乳業 研究・情報センター
(神奈川県座間市)
森永乳業の研究開発拠点として、基礎研究から食品やレシピの開発まで行っている。

口の中は細菌でいっぱい!

私たちは、一日に何個くらいの細菌を飲み込んでいると思いますか? 1万個?1億個?答えはなんと、「約1000億個」です。口の中には常にたくさんの細菌が存在し、その種類は500~700ほどと言われています。細菌というと、あまり良いイメージはないかもしれません。しかし、「細菌=悪いもの」では決してないのです。

例えば、「発酵食品を食べると、お腹の調子が整う」ということが知られていますよね。これは、ビフィズス菌などの細菌が、腸の中で良い働きをしてくれるから。「腸内の良い働きをしてくれる菌(善玉菌)を増やして、悪い働きをする菌(悪玉菌)を減らそう」という考え方は、かなり浸透しているのではないでしょうか。腸内に細菌が群生する様子を花畑に例えた「腸内フローラ」という言葉も、多くの方が耳にしたことがあると思います。

実は同じことが、口の中についても言えるのです。先ほど述べたように口の中にはたくさんの細菌がおり、これらの細菌群が口の中にひしめき合っている様子を、「腸内フローラ」と同様に、「口内フローラ」と呼んでいます。その中には、人間にとって良い働きをしてくれる菌もいれば、悪さをしてしまう菌もいます。大切なのは、「細菌をゼロにすること」ではなく、口内フローラのバランスを良い状態に保つことなのです。

口内フローラは唾液が守っている!

唾液中には、悪さをする細菌の増殖を抑える「抗菌作用」を持っている成分がいくつか存在しています。

今回はその中でラクトフェリンとラクトパーオキシダーゼに注目。「ラクト」とは「乳」という意味。唾液のほかにも哺乳動物の母乳などに含まれ、赤ちゃんを細菌感染から守ることに役立っています。

牛乳中から抽出したラクトフェリン(左)と、ラクトパーオキシダーゼ(右)。ほんのりピンク色と、緑がかった茶色をしていて、ともに無味無臭。

歯周病菌のエサを奪う「ラクトフェリン」

「フェリン」とは「鉄」のこと。ラクトフェリンは、鉄と結合する性質を持ったタンパク質です。一方で、歯周病菌や口臭産生菌など、悪さをする細菌の多くは、鉄をエサにしています。口腔内でラクトフェリンが鉄と結合すると、これらの細菌のエサが不足するため、増殖が抑えられるのです。そのほかの細菌の増殖は抑えないので、結果的に、口内フローラにおける悪い菌の割合が下がることになります。

口臭産生菌の邪魔をするなど「ラクトパーオキシダーゼ」

ラクトパーオキシダーゼは酵素の一種。それだけでは細菌を攻撃する力はありません。しかし、唾液中の成分と反応して、歯周病菌などの病原菌に対して殺菌力の高い「次亜チオシアン酸」を作り出します。また、この「次亜チオシアン酸」は、病原菌が、口臭の原因物質を生み出すことを妨げます。つまり、「病原菌の数」と「その働き」の両方を抑えてくれるのです。

口内フローラが乱れるとどうなるの?

外界に直接触れている口腔内では、細菌群のバランス=口内フローラは日々変化しています。口腔ケアの不足や、加齢による唾液量・唾液成分の減少などによって、口腔内の「悪い菌」が優勢になってしまうことも。そのような状態になると、歯周病にかかったり、口臭が発生したりします。さらに歯周病は、お口の中だけにとどまらず、全身の健康にも悪影響を与えることがわかっています。

口内フローラのバランスを保つには

口腔ケアをしっかり行う

正しい口腔ケアによって、歯や舌に付着した食べカスや病原菌を除去することが一番の基本。歯みがきやフロスといった日々のホームケアに加え、歯科医院で定期的にクリーニングを受けることが大切です。

機能性食品を利用する

ラクトフェリンとラクトパーオキシダーゼを配合した食品など、私たちの体が本来持っているチカラを補ってくれる製品も販売されています。生活習慣や年齢などの状態に合わせて、そのような食品を活用することも一つの方法です。

唾液量を増やす

唾液中の抗菌成分だけを増やすことは難しいのですが、唾液の総量が増えれば、それだけ抗菌力もアップします。唾液の分泌量を増やすには食べ物をよく噛むのに加え、お口の体操や唾液腺のマッサージなどをすることが効果的です。

口内フローラ研究のスペシャリスト教えて中野さん!
なぜ、乳製品の会社が口内フローラの研究を?
もともとは粉ミルクの開発過程で、母乳中のラクトフェリンなどが、赤ちゃんの病気の予防に役立っていることに着目。それらの成分が母乳と唾液に共通して含まれていることから、お口の健康に活かせるのではないかと考えました。
赤ちゃんの口の中にも口内フローラはある?
歯が生える頃から、口腔内の細菌が少しずつ増えると言われています。どのように口内フローラが成立するのかは、まだ研究途上。いずれにせよ、お子さんの口内フローラを良い状態にするためには、まずは親の口内フローラを整えることが大切だと考えられています。
牛乳を口に含めば、抗菌効果がある?
ラクトフェリンやラクトパーオキシダーゼは熱に弱いので、市販の加熱殺菌された牛乳中ではほとんど働きません。また、たとえ未加熱であっても、それらは、コップ1杯の牛乳200mLから数十mgしか取れない貴重な成分。直接牛乳から摂取しようとするのは、現実的ではないかもしれません。

口内フローラのバランスを整えて、
口と体を健康に保とう!